これを知れば仏教が面白くなる!大日如来と金剛界五仏と五智について

なんとなくつかみどころのない仏教ですが、基本的なところを押さえれば仏教がもっと身近に感じられるようになり、楽しくなります。今回は「大日如来」と「金剛界五仏」と「五智」を取り上げます。

目次

仏教にはたくさんの仏様がいるから多神教⁉

仏教にはたくさんの仏様が出てきます。

よく聞くところでも、

観音様
不動明王
大仏様
阿弥陀如来
文殊菩薩
薬師如来

などなど、
だれでも一度は聞いたことが
あるような仏様がたくさんいます。

こうみると、
仏教はまるで多神教のようだとも
思えますが、仏教の仏様は
本当は一つだけです。

それが「大日如来」です。

※かといって、厳密に考えると多神教でないならじゃあ一神教かというわけでもありません。

仏教の最高位の仏様「大日如来」

仏教には数えきれないほどの
仏様がいますが、
その最高位に位置するのが
「大日如来」です。

これは「毘盧遮那仏」(びるしゃなぶつ)
と呼ばれることもあります。
奈良の大仏様と同体です。

そして、
数多くの仏様は全てこの大日如来の
属性を別々に神格化したものです。

たくさんいるように見える仏様ですが、
全ては根本の大日如来の
一側面を取り上げたものなのです。

「大日如来」の名前の由来

太陽が暗闇を照らし、動物や植物の成長を助け、常にその輝きを失わないのと同じように、慈悲と徳とを一切の世界に行きとどける仏様であるから「日」と名付け、さらに、時間や空間の隔てすらないことから、日をも超える存在として「大」日如来と呼ばれます。

太陽と似ている点があるから「日」といい、さらにそれをも超える徳を備えているから「大」の字を加えて「大日如来」と呼ばれているのですね。

この3つの徳、暗闇を照らすのが「智恵の徳」であり、動物や植物を助けるのが「大慈悲の徳」であり、常にそこに存在するのは「自体常住」つまり、時間も空間も超えて常にそこにあるという徳、これらが大日如来の根本であり、全ての仏様の大元になっています。

さて、この大日如来からさらに4つの徳に分割されます

大日如来の4つの徳と五智

大日如来には以下の4つの徳があると言われます。

大円鏡智 だいえんきょうち

「大」とは私達の心には限界がないということであり、それが、「円」のように一切欠けるところがないことを示し、曇りのない鏡がすべてを映し出すように、全てを備えて欠けることのない清らかなる一切を映し出す智恵のことです。

平等性智 びょうどうしょうち

平等性智とは、すべてが平等であることを知る智恵のことです。

妙観察智 みょうかんざっち

妙観察智とは、一切の差別や区別を超えて、物事を正しく観察し、正邪を誤らない智恵のことです。

成所作智 じょうしょさち

成所作智とは、多くの人を救うために行動する(所作を成す)智恵です。


法界体性智 ほっかいたいしょうち

そして、上記の4つの徳をすべてまとめたものを法界体性智と呼びます。
上記の四智を全て備えた大日如来の知恵であり、これらを合わせて五智と呼びます。

五智に対応する金剛界五仏

実際にこうして五智の説明を
読んでみても、何だか難しいなと
思われるのではないでしょうか?

その気持ちってとても大事です。

実はそういう私達の思いが
様々な仏様を作り出していったのです。

昔の人も、
こうして仏様のありがたい教えを聞いても、
正直よくわからないという人が
たくさんいました。
そこで、どうにかして誰にでも
理解してもらえるように努めるわけです。

そうして生まれたのが様々な仏様です。

先程の五智にもそれぞれの徳を表す仏様がいます。
それが「金剛界五仏」と呼ばれる仏様たちです。

金剛界五仏とは、
大日如来の徳の五智を
わかりやすく神格化したものです。

それでは、下記に五智に対応する
それぞれの仏様を紹介します。

五智に対応する仏様

大日如来の智恵:
法界体性智(ほうかいたいしょうち)

阿閦如来の知恵:
大円鏡智(だいえんきょうち)

宝生如来の知恵:
平等性智(びょうどうしょうち)

阿弥陀如来の知恵:
妙観察智(みょうかんざっち)

不空成就如来の知恵:
成所作智(じょうそさち)

金剛界五仏のそれぞれの一般的な功徳

大日如来は全ての徳の本体なので
少し置いておきます。

まず、大円鏡智の阿閦如来から
説明していきます。

阿閦如来の知恵:大円鏡智

功徳  : 誘惑に負けない強い心を持つ 精神力 無病息災

一言  : 阿閦如来は修業をして怒りや憎しみを克服した仏様。

ご真言 : オン アキシャ(シュ)ビヤ ウン

宝生如来の知恵:平等性智

功徳  : 財を成す 浄罪 無病息災

一言  : 「宝より生まれたもの」という名前を持つ仏様。その功徳は人々に福徳をもたらす。

ご真言 : オン アラタンノウ サンバンバ タラク

阿弥陀如来の知恵:妙観察智

功徳  :極楽浄土へ行ける

一言  :阿弥陀如来は「自分の名前を呼ぶものを必ず極楽浄土に往生させる」との覚悟を持った仏様。

ご真言 : オン アミリタ テイゼイ カラ ウン

不空成就如来の知恵:成所作智

功徳  :目的達成

一言  :「不空」とは「確実に」という意味であり、確実に成就させるという意味を持つ仏様。

ご真言 :オン アボキャ シツデイ アク

五仏の功徳と五智

それぞれを照らし合わせると

阿閦如来の知恵:大円鏡智

「大」とは私達の心には限界がないということであり、それが、「円」のように一切欠けるところがないことを示し、曇りのない鏡がすべてを映し出すように、全てを備えて欠けることのない清らかなる一切を映し出す智恵のことです。

=煩悩に惑わされず、正しい知恵を持って心を強くする阿閦如来の知恵。

宝生如来の知恵:平等性智

平等性智とは、すべてが平等であることを知る智恵のことです。

=財宝を生み出し人々に福徳を授けると言われる、一切平等に幸せを届ける宝生如来の智恵。

阿弥陀如来の知恵:妙観察智

妙観察智とは、一切の差別や区別を超えて、物事を正しく観察し、正邪を誤らない智恵のことです。

=迷いの人々を助ける、つまり、極楽浄土へ手を引いて導く阿弥陀如来の知恵。

不空成就如来の知恵:成所作智

成所作智とは、多くの人を救うために行動する(所作を成す)智恵です。

=目的を達成させるために成すべき行動と智恵を授ける不空成就如来の知恵。

大日如来の智恵:法界体性智

そして最後に、
それらすべての総体であり、
一切の知恵と慈悲をつかさどる
大日如来の知恵となります。

仏様の本性であり成立過程

これらが仏様の本性であり、
成立過程でもあると言えます。

冒頭でもお伝えしましたが、
全ての仏様がこのように、
大日如来を中心として、
そこから生まれてきます。

そして、
大日如来からこの4体の仏様が生まれたように、
それぞれ4体の仏様も、
それぞれに自分を中心とした
4つの知恵を備え、
16体の仏様が生まれていきます。

そのように仏様というのは
増えていくのですが、
どれだけ増えてもそれは仏様の徳の側面を
神格化しただけであり、
大日如来と別々のものではありません。

※他の宗教から取り入れられた仏様など、成立過程を別にする仏様もいます。

※また、仏様なのに「神格化」という言葉を使っていますが、これは「崇める対象」という一般的な意味で使っています。

金剛界と胎蔵界について

先に「金剛界」という言葉を
取り上げてしまいましたが、
そもそも金剛界とはなんでしょうか?

密教には金剛界と胎蔵界という
考え方があります。

どちらも仏様の住む世界のことで、
金剛界と胎蔵界は二つで一つの
両輪の働きをします。

一般的には、
金剛界と胎蔵界は
「裏表」「陰陽」「主観客観」のように
二つで一つをなす世界観を示していると
考えて頂ければ良いです。

ただ、実質的な経緯としては、
もともと大日如来という主人公を中心に
書かれた仏教の教えが大きく二つありました。
大日如来という主役や考え方の根本は
その二つの教えとも同じだったのですが、
その中に出てくる役者(仏様)がそれぞれ違いました。

そして、時代が経って、
その二つの経典を合わせて一つの
世界観が作られました。

それが金剛界と胎蔵界という世界です。

ちなみに、二つの教えを合わせて
その世界観を作ったのは
空海のお師匠さんとも言われています。

いずれにしましても
仏教の中でも密教と呼ばれる宗派では、
仏様の世界を
この金剛界と胎蔵界というものに分けます。
そこにはそれぞれの仏様がいます。

金剛界と胎蔵界の
仏様を下記に取り上げてみます。
一般的になじみのあるのは金剛界の仏さまですね。

金剛界五仏

中央:大日如来(だいにちにょらい

東方:阿閦如来(あしゅくにょらい)

南方:宝生如来(ほうしょうにょらい)

阿弥陀如来(あみだにょらい) ※または観自在王如来)

北方:不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい

胎蔵界五仏

中央:大日如来

東方:宝幢如来(ほうとうにょらい

開敷華王如来(かいふけおうにょらい)

西方:無量寿如来(むりょうじゅにょらい)

北方:天鼓雷音如来(てんくらいおんにょらい

最後に

金剛界と胎蔵界の話しは少し余談でしたが、仏教の世界観について少しでもご理解を深めて頂けたでしょうか。

仏教は宗教としてではなく、歴史としても文化としても哲学としても人間学としてもとても面白いものです。是非仏教の世界観を楽しんでみてくださいね。

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